火災感知器に直接何かをぶつけると火災報知器が作動することがあります。この現象は主に熱感知器で発生します。熱感知器は自然現象や金属の特性を利用した構造になっているものがあるため、内部のパーツの形状が変形することで感知器内の電気回路がショートし火災信号を発信します。
多少何かがぶつかったくらいでは作動することはありませんが、変形させたり、凹ませてしまった場合は高確率で火災発報することになります。
今回は変形すると作動するタイプの2種類の感知器について紹介したいと思います。
外部打撃で発報する熱感知器

実験用警報設備モックアップ
今回は弊社の実験用自火報モックアップを使用して、実際に熱感知器に打撃を加えて、どの程度で火災信号を発するのかをレポートいたします。
熱感知器は『定温式スポット型』『差動式スポット型』を使用します。
この2種類の火災感知器は一般的な建物(防火対象物)に設置されているものです。特に共同住宅の専有部に設置されていることが多く、引っ越しやリフォームなどの作業中に何かをぶつけることで発生したりします。
次に2つの種類の詳細を書いて聞きます。
定温式スポット型感知器

定温式スポット型感知器
定温式スポット型感知器は一定の温度に到達すると内部の電気回路がONになるようになっています。感知器の内部に熱膨張率の異なる2つの金属でできたパーツ(バイメタル)を使用しており、バイメタルが熱による変形でスイッチを入れる仕組みです。
この感知器は主に以下の場所に設置されています。
- キッチン
- トイレ
- その他水回り関連の部屋
- 押し入れ
感知器の金属部分にはバイメタルが組み込まえれているため、もし何かをぶつけて変形させてしまうと強制的にバイメタルが変形しスイッチが入ってしまいます。
金属部分を覆うように樹脂でガードされているので簡単には変形しないと思いますが、もしガードする樹脂が割れていたり、完全に外れている場合は要注意です。また、かなり前の製品ではガードパーツが無いものがあります。壊れていたりパーツが外れているものは速やかに交換してただくことをおすすめいたします。
押し入れでは天井が低い部分に設置されていることがおおいので、比較的接触しやすいと思いますので十分にご注意ください。
差動式スポット型感知器のご紹介

ドームのような差動式スポット型感知器
差動式スポット型感知器は内部にふうせんのような空気室が設けられています。熱が感知器に加わると空気室が熱膨張し膨らんだ部分にスイッチが設けられています。一定以上の熱膨張によりスイッチが入り火災感知器が作動する仕組みです。
差動式スポット型感知器は主に次の場所に設置されています。
- 喫煙室
- 一般共同住宅
- 無窓階でない居室
この感知器の表面は薄い金属で作られており外部から強めの力をかけると簡単にへこんでしまいます。感知器内には空気室があると書きましたが、押すことで空気室の内圧が上がり膨らむことでスイッチが入り火災信号を発信することになります。
もしゴルフ狂の人がいたとして、共同住宅の居室内でゴルフスイングをしてい方は要注意です。クラブがすっぽ抜けて感知器にぶつかってしまうと火災信号を発してしまう可能性があります。くれぐれもご注意願います。
また、受動喫煙対策として喫煙室に感知器を設ける場合にも差動式スポットが使用されることが多いです。感知器にタバコのヤニが付着しウエスなどで清掃することが想定できます。差動式は熱膨張で空気室が膨らむ仕組みなので表面をこすると摩擦熱を発生します。その摩擦熱が空気室を膨張させ発報することが想定できますので取扱には十分にご注意ください。
どの程度の変形で作動するのか?
定温式スポット型

受熱部が変形した定温式スポット型
定温式を変形させてみます。定温式スポット型感知器は中央の金属部分にON・OFFスイッチが入っています。熱を受けたてバイメタルが『変形してスイッチON』になります。
ぶつけても熱を受けた状況と同じ状態になるため強制的にスイッチON状態になります。
差動式スポット型

凹んで発報した差動式スポット型感知器
差動式スポット型は、ドーム型金属部内部に空気室が収納されています。外部から金属部分を圧迫すると、内部の空気室に圧力がかかり火災信号を発します。押すとすぐにへこんでしまいます。
へこむとすぐに作動しますのでご注意ください。
実験動画
まとめ
熱感知器に外部打撃を与えてしまうと火災信号を発してしまいます。とてもシンプルでデリケートな構造のため取扱にはご注意くださいませ。
- 熱感知器が外部打撃で変形すると発報する
- 押し入れのものの出し入れ時には注意
- ゴルフスイングでぶつけないように注意