自動火災報知設備の誤作動の中でも圧倒的に多いのが差動式のスポット型感知器です。この感知器は感知器内部の気圧と外部の気圧の差により作動する仕組みのため、感知器自体が劣化している状態に加え、外気圧に変化があった場合に誤作動を起こします。
この差動式スポット型感知器は共同住宅の居室で使用することが多く、共同住宅で誤作動が起こったとくはます差動式のスポット型感知器の交換から提案しています。
今回は差動式スポット型感知器がなぜ誤作動原因について書いていきます。特に台風の季節や寒い冬で暖房器具により室温を一気に暖めるような条件下での誤作動が多く見られるためその理由についても詳しく解説していきたいと思います。
熱感知器【差動式】の誤作動

実際に誤作動を起こした差動式スポット型感知器【熱感知器】
差動式スポット型熱感知器が誤作動を起こす原因は下の3つです
- 気象条件
- 差動式スポットの劣化【リーク孔のつまり】
- ぶつけた
差動式スポット型感知器の誤作動によくあるのが、1気象状況、2感知器の劣化、3ぶつけるの3パターンです。ほとんどの誤作動は1と2が同時に起こったときに起こります。気象状況と感知器の劣化でなぜ誤作動を起こすのか書いていきます。
差動式の熱感知器の原理とは?

差動式の熱感知器の特徴として感知器内部に空気室があります。感知器に熱が加わると、感知器内部の空気室が熱膨張により膨らみます。一定の加速度で空気室が膨らむことでスイッチONになり火災信号を発します。
空気室とリーク孔という空気を逃がす穴が備えてあり、空気室に溜まった空気を排出する役目をしています。つまり空気がいっぱいになってスイッチが作動しないように呼吸をしているわけです。
空気室が膨らむとスイッチONになりますが、膨らむよりも空気が逃げる量が多ければスイッチはONにはなりません。差動式スポット型感知器は空気室の膨張とリーク構造により呼吸をしておりバランスが崩れたときに作動する仕組みとなっています。

このリーク孔が何らかの理由で詰まってしまったらどうなるでしょうか。詰まる理由としてはチリやホコリです。設置から年月を経て小さいチリやホコリが感知器に溜まりリーク孔をつまらせます。
リーク孔が塞がれている状況下では空気室が膨らみやすくなります。膨らみやすくなるということは作動しやすいということになります。

差動式スポット型の構造
リーク孔の詰まりと気象条件の関係
リーク孔が詰まると感知器が作動しやすくなるということがわかりました。次に空気室が膨張する理屈について説明します。
まず、熱を加えることで空気室が温められ風船のように膨らみます。リーク孔が詰まっていれば空気の逃げ道がないためすぐ作動してしまいます。
次に空気室が膨らむ状況になるのが周囲の気圧が低下することです。周囲の気圧が低下すると空気室の表面が外側に引っ張られることになります。リーク孔が詰まっていれば空気は膨らみっぱなしになるので感知器が作動します。
この周囲の空気圧が低下する現象が台風です。誤作動は台風の季節に多く発生しているのです。
誤作動を起こさないための対策
差動式スポット型感知器が原因で誤作動を起こす理由は上に書いたことがほとんどです。定期定期な感知器の交換もそうですが、誤作動を起こす感知器は定期点検時の加熱試験での反応速度が早い傾向にあります。加熱試験機で熱をかけたらすぐ作動するものもあります。
このような感知器を見つけたらその時点で交換することをおすすめいたします。感知器も機械なのでロットによっては若干作動しやすいものやしにくいものがあることでしょう。
※法令の規定内でのバラツキがあるという意味
怪しい感知器を発見したら交換することや、日本火災報知器工業会か推奨する時期に器具の交換を行うなどの対応をおすすめいたします。
実際に感知器を交換してみた

誤作動を起こした感知器を交換していきます。差動式スポット型熱感知器はベースと本体が1セットになっており、熱感知部の通称ヘッドを回転させベースから切り離します。ベースとヘッドは爪のような端子で接続されています。この端子部分には一般的にDC24Vが常時流れています。設置から年月を経過すると画像のようにチリやホコリが溜まっていきます。これがリーク孔をつまらせる原因となります。

天井に固定されているビス類を外し、端子に接続されている線を1本ずつ切り離していきます。この火災感知器の回路は切断すると火災受信機で断線エラーを出す仕組みになっており警報音が鳴り響きます。
また切った配線がショートすると火災信号と同じ信号を発します。
新品に交換・加熱試験

交換工事が完了しました。最後に加熱試験機でチェックして問題がなければOKです。交換後はしばらく様子見をみて再度誤作動が起こらなければ無事完了です。
原因不明の感知器誤作動は長期戦になることが多いですが、予め様々な角度から考察していくことでスムーズな改修が可能になります。
まとめ
- リーク孔が詰まると空気の逃げ場がなるなる
- 空気の逃げ場がなくなると空気室が膨らみ発報する
- 誤作動対策は耐用年数での交換を推奨
参考記事:緊急事態!火災報知器の誤作動よくある原因【非火災報】
参考法令:自動火災報知設備の感知器等