消防署査察・立ち入り検査の指摘事項と建物の使用禁止について
2019.12.20
消防署から勧告書をもらいました。とのように対応すればいいのかわかりません。
たびたびこのようなご相談をいただきます。お話を伺ってみるとほとんどが「どのように対応してよいのかわからずそのままになってしまった」というケースです。たまりにたまって手がつけられなくなることはよくあります。
わからないことは消防署や専門の業者に確認すれば良いかと思います。通知を受けたからといってすぐに建物が使用禁止になることはありませんが、早急に対応する必要があります。
消防署からの指導、勧告、命令
指導、勧告、命令の違いについて

消防法令上なにかしら問題がある場合は、管轄の消防機関から問題改善の行政指導が行われます。改善されない場合は勧告、命令と続きます。指導→勧告→命令という形で進んでいきます。
指導、勧告は行政指導に該当し「行政からのお願い」となり強制力はありません。問題が発覚した後に期限を設けて是正してくださいというお願いからはじまります。お願いを無視し続けると命令となります。命令は法的拘束力があるため必ず従わなければなりません。
先にも書きましたが、いきなり建物が使用停止にならないのは、このステップを踏んでから最終的な処分を行うからです。上の画像は勧告書で、最終的な行政指導と言えます。勧告を放置すれば次のステップに移行します。
まだ猶予があるから大丈夫と考えるのは大変危険です。もし今の状態を放置し事故が起こった場合の責任は計り知れません。早急に問題を除去していく必要があります。さもなければ建物の使用を停止されるおそれがあります。根拠条文をご紹介します。
第五条の二
消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について次のいずれかに当する場合には、権原を有する関係者に対し、当該防火対象物の使用の禁止、停止又は制限を命ずることができる。
一 前条第一項、次条第一項、第八条第三項若しくは第四項、第八条の二第五項若しくは第六項、第八条の二の五第三項又は第十七条の四第一項若しくは第二項の規定により必要な措置が命ぜられたにもかかわらず、その措置が履行されず、履行されても十分でなく、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行されても当該期限までに完了する見込みがないため、引き続き、火災の予防に危険であると認める場合、消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合又は火災が発生したならば人命に危険であると認める場合
二 前条第一項、次条第一項、第八条第三項若しくは第四項、第八条の二第五項若しくは第六項、第八条の二の五第三項又は第十七条の四第一項若しくは第二項の規定による命令によつては、火災の予防の危険、消火、避難その他の消防の活動の支障又は火災が発生した場合における人命の危険を除去することができないと認める場合
○2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による命令について準用する。
消防法第五条の二
勧告から命令に移行する前にある「公表制度」
度重なる行政指導(行政からのお願い)が履行されない場合は改善命令が出されることになります。その命令が出される前に建物の違反状況について公に公表される制度が「公表制度」です。指導→勧告→公表→命令という流れです。
公表されるとインターネットで住所、建物名、違反内容などを簡単に見ることができます。行政機関は強制的な命令などの権限行使をできる限り避けるため、公表という手法によって是正を促すことがあります。
命令に違反した場合の罰則

物件を公表された後、是正命令義務に違反した場合には消防法により罰則が設けられています。
- 拘禁刑3年以下、罰金300万円以下【消防法第39条2-2-1】
- 両罰:1億円以下の罰金 【消防法第45条1】
第三十九条の二の二第
五条の二第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2前項の罪を犯した者に対しては、情状により拘禁刑及び罰金を併科することができる。第四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 十九条の二の二第一項、第三十九条の三の二第一項又は第四十一条第一項第七号 一億円以下の罰金刑
消防法第39条の2の2
消防法では法令違反に対して罰則を設けています。内容によって異なりますので別記事を参照ください。