令八区画とは『消防法施行令第8条』に規定されている防火区画のことをいいます。施行令の8条なので令8(れいはち)区画と呼ばれています。
この区画が形成されている場合、同じ建物にある区画の中と外をそれぞれ別の建物としてみなします。ものすごく頑丈な区画が設けられている建物では、火災が起こっても隣接区画に燃えうるつことは考えにくいため、要件に適合してる区画が設けられている場合は別に立っている建物として扱うことになります。
令8が適用されると、1つの建物が別々の建物になるので消防設備の設置基準が1つの建物より小さくなり、場合によっては設備設置が免除ということになります。
令8区画の根拠条文と要件について
第八条
消防法施行令第8条(令8区画)
防火対象物が開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
この条文には、建築基準法2条7号に規定する区画(壁や床が2時間以上耐えられる耐火構造)で区画されている部分は別の建物とみなすと書いてあります。令8区画が形成されている建物のパターンは、1階が店舗で2階以上が共同住宅だったり、横に店舗が連なる鉄筋コンクリート作りの店舗等があります。
共同ビルでは部分ごとに建物の所有者が異なるため、区画それぞれに令8を適用していることが多くあります。
令八区画の構造
- 鉄筋コンクリート造(RC)、鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)、これと同等以上堅牢かつ容易に変更できない耐火区画
- 加熱に耐えられる時間が2時間以上の耐火性能を有すること
- ①令8区画の床、壁の両端または上部は、建物の外壁または屋根から50cm以上突き出していること。
②令8部分を設けた部分の外壁または屋根が令8区画壁を含む3.6m以上に渡り耐火構造であり、かつ開口部がない場合
③開口部がある場合で令8区画を介して90cm以上確保されて、開口部が防火戸のもの
令8区画と認められるためには防火上安全であることが必要になるので、火災による延焼リスクが少ない構造が求められます。そもそも令8は別の建物として取り扱う趣旨なので当然と言えば当然です。
この要件の根拠条文は消防法施行規則第5条の2になります。引用条文はまとめて次の節に記載します。
区画を貫通する配管等

令8区画は原則として配管の貫通は認められていません。しかしながら必要不可欠な配管であれば下の要件に適合していれば『開口部のない耐火構造の床または壁による区画』と同等とみなすとされています。
『配管を貫通する場合で、開口部のない耐火構造の床または壁による区画』とは
- 原則として給水配管(付属する通気管を含む)
- 一つの配管の外形は200mm以下
- 配管を貫通させるために令8区画に設ける穴の直径が300mm以下
- 令8区画に設ける穴相互の離隔距離は、貫通する穴の大きい方の数値以上の距離をとること
- 配管、貫通部は火災時の加熱に2時間以上耐えられる性能を有すること
- 配管の貫通部はモルタル等の不燃材料で完全に埋め戻す施行であること
- 熱伝導で配管の表面に可燃物が接触した場合に発火する恐れがある場合には、可燃物が配管の表面に接触しないような措置を講じること
これら要件の根拠は消防法施行規則第5条の2に記載されています。引用条文を記載します。
(開口部のない耐火構造の壁等)
消防法施行規則第5条の2
第五条の二
令第八条第一号に掲げる開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁(以下この条において「耐火構造の壁等」という。)は、次のとおりとする。
一 耐火構造の壁等は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他これらに類する堅ろうで、かつ、容易に変更できない構造であること。
二 耐火構造の壁等は、建築基準法施行令第百七条第一号の表の規定にかかわらず、同号に規定する通常の火災による火熱が二時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
三 耐火構造の壁等の両端又は上端は、防火対象物の外壁又は屋根から五十センチメートル以上突き出していること。ただし、耐火構造の壁等及びこれに接する外壁又は屋根の幅三・六メートル以上の部分を耐火構造とし、かつ、当該耐火構造の部分が次に掲げるいずれかの要件を満たすものである場合は、この限りでない。
イ 開口部が設けられていないこと。
ロ 開口部に防火戸(建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備であるものに限る。以下同じ。)が設けられており、かつ、耐火構造の壁等を隔てた開口部相互間の距離が九十センチメートル以上離れていること。
四 耐火構造の壁等は、配管を貫通させないこと。ただし、配管及び当該配管が貫通する部分(以下この号において「貫通部」という。)が次に掲げる基準に適合する場合は、この限りでない。
イ 配管の用途は、原則として給排水管であること。
ロ 配管の呼び径は、二百ミリメートル以下であること。
ハ 貫通部の内部の断面積が、直径三百ミリメートルの円の面積以下であること。
ニ 貫通部を二以上設ける場合にあっては、当該貫通部相互間の距離は、当該貫通部のうち直径が大きい貫通部の直径の長さ(当該直径が二百ミリメートル以下の場合にあっては、二百ミリメートル)以上とすること。
ホ 配管と貫通部の隙間を不燃材料(建築基準法第二条第九号に規定する不燃材料をいう。以下同じ。)により埋める方法その他これに類する方法により、火災時に生ずる煙を有効に遮ること。
ヘ 配管及び貫通部は、耐火構造の壁等と一体として第二号に規定する性能を有すること。
ト 配管には、その表面に可燃物が接触しないような措置を講じること。ただし、当該配管に可燃物が接触しても発火するおそれがないと認められる場合は、この限りでない。
令8区画を適用した防火対象物
もともと特定用途の複合防火対象物で用途を挟む形で令8区画が成立している場合はそれぞれ別々の建物とみなします。また、よくあるパターンで、1階に店舗が入っている物件で2階以上に事務所や共同住宅の場合は、1階と2階の間で令8区画を形成していることが多くあります。
令8区画の消防設備設置について

令8区画が適用されればそれぞれの区画面積で設置基準を確定させることになります。極端な話、大規模物件でもそれぞれの区画が自動火災報知設備の設置基準面積よりも小く小分けされていたら自火報を設置する必要はありません。
令8区画の簡単な見分け方【令8でない場合もある】
外側から電気の引き込みがどうのように建物内部に入ってきているか確認してみてください。発電所で作られた電気は電柱や地中を経由して建物に取り込まれます。複合用途ビルの電気配線は一旦建物内に取り込まれてから各区画へ分配されます。
令8区画の場合、開口部のない開口部の要件があるため電気配線を個別に区画内に取り込みます(一概に言えない)。簡易的な確認方法の一つとして電気配線がどのようなルートで入ってきているのかを確認します。
表面的な判断になり断定はできませんが建物の令8の可能性について検証材料になります。見た感じ要件に適合している場合でもまずは管轄の消防署へ確認相談することが必須になりますのでご注意ください。