火災通報装置の概要と実際に設置工事してみた!!

2019.12.09
消防機関へ通報する火災報知設備

消防設備には『火災通報装置』という消防指令センター(119)に自動通報可能なシステムがあります。正式には消防機関へ通報する火災報知設備と呼び、設置基準は消防法施行令23条に定められています。

この設備は自動火災報知設備の作動に連動する方式と、火災通報装置の緊急ボタンを押して作動させる2つの方法があります。滞在型の福祉施設では自動火災報知設備と連動させる必要があります。近年では携帯電話による通信技術の向上により、消防法の特例を使用することで火災通報装置の設置が免除できるケースも増えてきております。

今回は火災通報装置を実際にタイムランで設置した模様と、システムの概要について書いていきます。

火災通報装置とは

消防機関へ通報する自動火災報知設備の画像

『火災通用装置』は消防署へ自動的に通報することができる装置です。

この装置は自動火災報知設備が作動した場合や、火災通報装置本体に設置された『火災通報ボタン』を押したときに、電話回線を使い119番に通報します。あらかじめ機械(ROM)に録音した住所や物件情報の音声データを消防署に伝えます。

火災時にパニックにならず確実に119番通報できるとともに、初期消火や避難誘導の人員を増やすことができます。自火報のシステムと連動が必要か否かのについては別の記事に記載しておりますのでご参照ください。

火災通報装置が必要になるとき

火災通報装置の設置基準は消防法施行令第23条に記載されています。設置基準については別の記事に記載していますのでこちらを参照いただけますと幸いです。

簡単に設置基準について説明すると、入院が可能な病院や助産所、老人短期入所施設はすべて義務になります。地下街についても義務になります。これらの用途は火災が発生した場合の人命や財産の被害が著しく、早急な対応が求められます。なので、面積に関係なく火災通報装置の設置が義務付けられています。

  • 有床の病院、診療所 (全部)
  • 老人短期入所施設 (全部)
  • 地下街/準地下街 (全部)
  • その他の用途 (基準面積以上で必要になる)

その他の用途ではそれぞれに面積基準が設けられており、面積基準により設置する必要があります。

実際に設置工事してみた

火災通報装置工事中の画像

今回は火災通報装置と同時に自動火災報知設備の設置も承りました。設置する用途は宿泊を伴う福祉施設のため消防署への自動通報設定が必要になります。自動通報は火災受信機の移封接点を使用して連動させます。

各機器類を設置するスペースが限定されており、省スペースを分け合う感じで配置しました。火災受信機(左)総合盤(中)火災通報装置(右)の順で並んでいます。連動設定は右側の火災受信機から2本の配線を火災通報装置まで持ってきます。

連動回路の接続するだけで設定はいりません。火災受信機側の無電圧A接点を使って火災通報装置の移封受け端子に接続します。A接点は元々開いているスイッチ回路で、火災信号を受信した火災受信機の移封回路が閉じることで火災通報装置が自動的に作動する仕組みです。火災受信機と火災通報装置の間に連動停止スイッチを設けることができます。

連動停止スイッチは消防設備点検時に誤って消防機関に通報が行かないようにするために設置します。通常火災受信機にも連動停止スイッチがありますが、これとは別に火災通報装置専用の連動停止スイッチになります。画像を取りそこねてしまいました。

火災受信機では火災信号を火災通報装置やその他の機器類と接続させ連動システムを構築することができます。

火災通報装置には専用電話機を接続します。この電話は消防指令センターと直接話すためのものです。この電話には通話機能の他に自動通報押しボタンも設置されており、ボタンを押すことで消防通報が可能です。専用電話機は複数台設置することができ、管理室や宿直室が複数がある場合に各々に設置します。

火災通報装置に接続する電話線の元

火災通報装置本体と電話機の接続が完了したら、次に電話線との接続です。火災通報装置と接続する電話回線は通常アナログ回線を使用します。火災通報装置で使用する専用の回線を容易する必要があります。インターネット光電話を使用する方法もありますが、不具合の発生を懸念して弊社ではアナログ回線を用意していただいております。

総務省消防庁サイトに「固定電話のIP網移行に伴って火災通報装置に発生する事象への対応について」の注意書きがありますのでご参照ください。

消防機関へ通報する火災報知設備

ということで電話回路への接続が完了すれば作動試験に移ります。

工事完了・作動試験

火災通報装置の模擬試験機

設置工事が完了したら次に作動試験を行います。試験はサクサ社のANTS-101を使用します。この火災通報装置と消防司令センターとの通信を実践同様に行うことができる機械です。

まず火災通報装置の非常電話で緊急押しボタンを押します。ボタンを押すと火災通報装置が反応し電話回線のピポパ音とプルルルルと発信音が鳴ると同時に、画像右側の電話機が着信音を発します。

画像右側の電話の受話器を上げると、火災通報装置の自動音声が流れます。内容は「消防識別記号」「住所」「物件名」の順に流れます。消防識別記号は工事前に届け出する着工届時に発行される識別番号で例えば「豊島〇〇号」や「新宿〇〇号」のような番号です。〇〇には数字が入ります。豊島、新宿は届け出る消防署の名称になります。

自動音声に問題がないか確認し、サクサ社のANTS-101でボタンを押し逆信操作を行います。逆信とは、かかってきた発信元に電話を送り返すことです。逆信操作を行うと火災通報装置の赤い専用電話に電話をかけ相互通話することができます。

その後、自動火災報知設備の連動試験と、割り込み通話試験を行います。その他細かいことがありますが、一連の流れはこのような感じです。今回の作業も特に問題はなく正常に作動することが確認できました。

あとがき

火災通報装置の設置工事前の届出については他の消防設備と若干異なり、あらかじめ録音する識別番号の発行が必要になります。識別番号を含めた物件情報をROMに録音する必要があるので、独自の判断で録音内容を決めてしまった場合は消防検査に通らず、適正な情報を再録音する必要があり、再録音料金と日数がかかってしまいます。

そんなことはないと思いますが念の為ご注意いただければ幸いです。

火災通報装置工事完成画像

後付工事でも可能な限り隠蔽配線にて施工いたします。設置工事に関するご相談がございまいしたらお問い合わせお願いいたします。

よく読まれている記事