火災感知器未警戒を増設工事をしてみた

2019.11.23
火災報知器未警戒画像

火災感知器を設置しなければいけない場所は消防法施行規則第23条4項1号に記載されています。詳細は省きますが、自動火災報知設備の設置がある物件では基本的に全ての居室、区画に感知器を設置する必要があります。

もし何らかの事情により感知器が設置されていない場合は「未警戒」となり、半年に一度実施される消防設備点検により指摘されたり、消防署の査察などで指摘され改善を命じられることになります。

未警戒になる原因は?

未警戒とは
未警戒(みけいかい)は自動火災報知設備の火災感知器が本来必要であるにもかかわらず、設置されていない状態を言います。
未警戒は火災感知器に以外にスプリンクラー、消火栓、漏電火災警報器などの消防設備に対しても使われています。

未警戒になる理由

未警戒は必要な消防設備があるにもかからわず設置されていないことを指します。なので新築の建物では基本的に発生しません。あるとすれば確認申請時に消防設備の設計が漏れており、さらに関係行政庁がその設計について見落としている場合です。このようなことは基本的に考えられません。仮にこのようなことが起こっても完成検査時に発覚する確率が高く何らかの是正が必要になるでしょう。

では、どのような場合に未警戒になるかというと次のとおりです。

  • 設置不要の建物が入居テナントにより全体に自火報が必要になった
  • 本来必要なのに取り付けていないテナントに居抜きで入居した
  • DIYで内装施工して消防関連は施工しなかった
  • 内装業者がよくわかっていないで天井裏に埋まっている
  • お金がかかるから天井裏に埋めた

残念ながらこれらの理由で適切に消防設備が設置されていないことがあります。近年では法令を把握していない外国人の電気工事業者が増えてきており、どのように処置してよいのかがわからずうやむやになってしまうケースも多く確認されています。弊社でもこのような状況を何度も目の当たりにしており、全国的にもこのようなことが起こっていると推測できます。

未警戒の発覚はどのように起こるのか?

では次に未警戒がどのような発見されるかについて書いて聞きます。消防設備の不備が見つかるパータンは2通りあります。

  • 法定消防設備点検で発見
  • 消防署による査察で発見

建物(防火対象物)には消防法17条の3の3の規定により半年に1度消防設備の点検を実施する決まりがあります。これは国会で制定された法律のため必ずに実施されなければならない義務となっています。

この法定点検により、日々更新される建物の状況について防火管理者から委託を受けた消防設備業者などが判定しています。

もう1点、法定点検以外の発覚理由としてあるのが管轄消防署による消防査察です。消防本部により頻度はまちまちですが消防官が査察にやってきます。その時に感知器未設置を指摘されることがあります。指摘された場合は期限を定め改修計画の届出を指導され、最終的には感知器の設置を命じられることになります。

査察で指摘されるケースはまれで、基本的には消防設備点検での不良判定として発覚します。ビル関係者の立場としては、どこにどのような設備が必要かわからないことが多いかと思います。定期的に建物の状況を点検業者に確認することが重要です。

今回のミッションのついて

天井裏配線

今回のミッションは、内装工事で火災感知器が行方不明になり消防法令に適合させる工事です。

このような案件の場合はまずはじめに現地調査に伺います。既存の火災感知器が1つでもあれば施工はやりやすいのですが、1つも感知器がない場合は厄介な工事になる確率が高まります。現地調査では次のことをチェックします。

  • 建物に自火報の設置があるか
  • テナント部に押しボタンやベルがあるか
  • 既存の感知器があるか
  • 建物の構造と天井の高さ

これらの情報を基にどのように工事を進めていくかが確定します。今回についてはテナント部に押しボタンとベルが設置されており、感知器だけが取り付けていない状況でした。このような状況から推測できることは、既存の火災感知器が天井の裏に転がっていることです。調べてみるとビンゴでした。内装工事時に何らかの理由で自火報工事ができなくなってしまったのでしょう。

調査の結果感知器の増設が6台必要で、天井裏に転がっている既存感知器も古かったので全て交換することになりました。消防設備の工事は工事前と工事後に届出が必要になります。

工事前の届出に関しては、工事内容が軽微な内容であれば省略できる場合があります。

工事開始

天井裏自火報配線

今回の工事では天井に点検口と数多くのダウンライトが設置されていたので、こちらの開口部を使用し隠蔽配線を行っていきます。店舗を想定したテナント物件では天井が高くなっていることがあるので、今回のような出来上がった店舗でも高確率で隠蔽配線が可能になります。

自火報の回路は4芯工事で行います。4芯というのは配線の被覆の中に銅線部分が4本あるということで、4つの線で感知器の回路を作っていきます。詳細は別の記事で紹介していますのでよろしければご参照ください。

感知器の設置

未警戒工事、煙感知器を増設

配線が完了し器具付け作業に移行します。火災感知器の設置にはいくつかの制限があります。その制限とは「壁、梁、エアコン」から離隔し設置することです。感知器には細かい設置基準があります。今回は煙感知器を使用しているため煙感知器の設置基準が適用されます。

煙感知器は壁と梁から60cm以上離れた場所に設置しなければなりません。またエアコンなどの吹き出しから1.5m以上離隔を取らなければなりません。居室が狭い場合はこれらの基準通りに設置できない場合があります。このようなときは吹き出しの影響を受けない部分で入口の扉付近に設置することが多いです。

感知器の取り付ける場所によっては非火災報(誤作動)を起こすことがあるのでしっかりと検証してから設置場所を確定させる必要があります。

あとがき

経験上、感知器の未警戒は複合用途ビルで起こりやすい印象です。店舗内装工事や間仕切りの変更を行うと合わせて火災感知器も増設、移設する必要があるのですが、更新されずの状態になっていることがあります。

このような状況が放置されると新たに発生する他の不良項目が追加され、いつの間にか不良だらけということになってしまいます。今までこのような建物を何度も見てきましたが、改善されるのは消防査察が入って初めてアクションというケースが多いです。

理由は様々と思いますが火災が起こってからではどうにもならないので速やかな改修をご検討いただければ幸いです。

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