民泊・旅館業の消防設備工事ガイド【消防設備士✕行政書士が最新法改正解説】

2023.03.30
特定小規模施設用自火報画像

💡 2026年最新版:2024年7月施行の改正消防法に対応済み

本記事は2023年3月の公開以来、民泊・旅館業の開設・消防設備工事を検討されている方々にご活用いただいております。

2024年(令和6年)7月の省令改正により、「特定一階段等防火対象物(300㎡未満)」においても無線式の特定小規模施設用自火報(特小)が使用できるようになりました。これにより、これまで高額な設置コストが課題となっていたケースで費用を大幅に抑えられる可能性があります。

今回のリライトでは、最新の設置基準をもとに情報を全面的に見直しました。まずは判定チェッカーで、あなたの物件が対象かどうかをご確認ください。

住宅宿泊事業法に基づく宿泊施設(以下、民泊)あるいは旅館業に基づく宿泊施設(以下、旅館業施設)を始める際に避けて通れないのが消防法。

施設運営に関する法令の取扱や設置コストに関して全体像を網羅する内容を書いていきたいと思います。

※この記事では住宅宿泊事業法に基づく宿泊施設を「民泊」と定義して使用します。民泊(届出制)、旅館業施設(許可制)という言葉で記載いたします。

民泊と消防法の基本:なぜ一般住宅より厳しいのか?

一般住宅が宿泊施設用途に変わると、消防法令による規制が大変厳しくなります。理由は、消防法令の中でも特に強い規制のホテル用途(5項イ)に変わるからです。

ホテルに類似する用途は「カラオケ」「入院ができる病院」「老人ホーム」などと同様のものになります。これらの用途は、生命や財産に大きな影響を及ぼすと考えられており、消防法令上特に厳しい基準が適用されることになります。

また、宿泊用途では消防法令と建築基準法令で取り扱いが異なりますのでこの点もご留意ください。

  民泊施設 旅館業施設
 消防法令上の用途名 ※変更無し 原則「ホテル・旅館」扱い 原則「ホテル・旅館」扱い
 建築基準法令上の用途名 ※変更あり 住宅 原則「ホテル・旅館」扱い

2. 民泊・旅館業施設に必要な消防設備6種類

消防法令上では民泊と旅館業施設は同じ用途として扱います。なので、民泊を旅館業施設に用途変更しても設備はそのまま使用でき、既存でそのまま使用する場合は追加の届出は必要ありません。

戸建てであれば

①自動火災報知設備

自動火災報知設備は、無線式の「特小自火報」と「有線式の自動火災報知設備」があります。前者は一般的に延べ面積が300㎡未満の施設で使用でき、後者は延べ面積が300㎡以上の建物に設置することになります。

有線式の自動火災報知設備には設置基準が設けられています。一方、特定小規模施設自動火災報知設備には、別の設置基準 が設けられています。

自分の物件で高額な有線式の自火報が必要なのか、それとも安価な『特小自火報』で済むのか。実務でよく使う判定基準をシミュレーターにしました。30秒で結果が出ます。

🔥 FIRE SAFETY CHECK

特定小規模施設用
自動火災報知設備
適用チェッカー

質問に答えるだけで、特小自火報が
使えるかどうか判定します。

判定結果はいかがでしたか?『適用可能』と出た場合でも、電波状況や所轄消防署の独自判断により構成が変わることがあります。一度ご相談ください。

家主不在型の戸建・アパート・マンション1室 延べ面積300㎡以上の建物、または大規模マンション
必要な消防設備 特定小規模施設用(特小) 自動火災報知設備(自火報)
工事の難易度 中(無線式なら配線不要) 高(有線工事・専門技術が必要)
費用の目安 十数万円〜数十万円 数十万円〜数百万円
消防署への届出 設置届が必要 設置届が必要
詳細解説記事 特小自火報を賢く安く設置するコツ 自火報の設置基準・法的根拠
現場の実例 特定一階段でも特小が使える条件 コンクリート物件への施工実例

有線式の自動火災報知設備を設置する場合は大幅にコストが掛かることになります。

②誘導灯

誘導灯画像
誘導灯

誘導灯は緑色の光っている装置です。民泊旅館業施設では誘導灯の設置が義務になります。しかしながら、誘導灯にはいくつもの免除基準があります。

基準に当てはまる場所については免除することができるので、設計確認や消防事前協議で確認しておくとよいでしょう。

誘導灯の免除については担当消防官の主観がかなり影響するので、設計の間取りによっては免除できないこともあります。

③消火器

訓練用の消火器画像

消火器は面積により設置基準が変わります。一般的には延べ面積が150㎡以上ある場合に設置します。小規模民泊や旅館業施設では消火器の設置義務がないケースもあります。

ただ、建物が小規模でも火災発生時の初期消火は重要となるので自主的な安全管理の観点からは設置が望ましいです。

④漏電火災警報器(ラスモルタル構造の物件)

分割型変流器画像
分割型変流器

昭和時代によくあったレトロなラスモルタル木造物件で「契約電流が50A」を超える場合に設置義務が生じます。

⑤非常灯【建築設備】

非常灯画像
黒い設備が非常灯

非常灯は消防設備ではなく建築設備として取り扱います。一般的には30㎡以上の居室に設置されますが、いくつもの設置免除規定があります。民泊や旅館業施設では各階から地上出口までに至る階段や通路に設けることで誘導灯の設置を免除することができる場合があります。

また、コンセントプラグに挿せるタイプの非常灯も発売されています。設置は便利になりつつある一方で、ブレーカーから電源の取り方を間違えると停電時に点灯しない場合があります。

適切な方法にて施工することが求められます。

⑥避難器具

一動作式避難器具の画像
一動作式避難器具

階の収容人数が「30人以上」になったら避難器具が必要になります。一定の建物の場合(特定一階段等防火対象物)では「10人以上」で、場合によっては「一動作式の避難器具」が必要になります。

避難器具の設置基準は多少ややこしいので、設置を検討されている場合はお問い合わせください。

物件タイプ別の費用目安(相場観)

弊社が今まで受注してきた民泊、旅館業施設の消防設備工事費用に関しては、建物の構造や状況によって大きく異なり、一概にお伝えすることが困難です。

工事費用に関しては、鉄筋コンクリート > 鉄骨 > 木造アパート > 戸建て の順に費用がかかってしまいます。どれだけの収益バランスで投資できるのかを慎重に検討する必要があります。

戸建て

一番オーソドックスなのが戸建てです。平屋、2階建て、3階建ての順に費用が上がっていきます。戸建てに設置する一般的な消防設備は以下のとおりです。

  • 特定小規模施設用自火報
  • 誘導灯
  • 消火器
  • 非常灯

弊社では30万円~60万円くらいの価格帯で数多く受注してきました。。

②木造マンション、アパート

木造マンションは1室、数室、全室それぞれのパターンがあります。民泊を行いたい物件が見つかって、先に運営をしている人がいる場合は、特定小規模施設用自火報をペアリングして連動させる必要があります。

  • 特定小規模施設用自火報
  • 誘導灯(開放廊下屋外階段は不要)
  • 消火器
  • 非常灯

1室のみの運営で10万円台後半、部屋数によっては全室で60.70.80万円くらいになるケースがあります。

③鉄筋コンクリートマンション

鉄筋コンクリート(RC)マンションはコストがかかりやすい物件です。理由は電波が届きにくく特定小規模施設用自火報の設置ができないことがあります。特定小規模用自火報が使えない場合は有線式の自火報を設置が必要になります。

弊社では数多くの耐火構造物件に自動火災報知設備を設置してきました。費用は建物の構造により全く異なるためもし設置を検討されている場合はお問い合わせください。

④「番外編」大型物件の落とし穴

屋内消火栓がついている比較的大きな共同住宅に民泊用途として入居する場合は自家発電設備が必要になるケースがあります。この設備は1,000万円を超えるケースも多いので要注意です。

消防手続きの流れ:申請・届出・立会検査

民泊施設開設の届出を行う場合、消防署が発行した「消防事前相談記録書」が必要になります。消防申請を始めるためには、まずこの様式の取得から始める必要があります。

なお、旅館業施設場合は「事前相談記録書」は不要となります。

手順1:消防事前相談と相談記録書の取得

消防申請はこの事前相談記録書の作成から始まります。言い方を変えればこれがないと始まりません。

この様式は原則、管轄消防署にアポイントをとり、民泊を始めるにあたっての注意事項の説明を兼ねた事前打ち合わせです。

取得時はあらかじめ開設する施設の図面や面積情報などを持参すると話が早いです。設置する設備の種類や設置場所などについても教えてもらえます。

お時間がない方で取得をご希望の場合はタイムランで代行が可能です。

手順2:基準の特例申請(特小自火報の申請)

特定小規模施設用自火報を設置する場合、一般的な消防設備の基準と異なる取り扱いになるため「基準の特例申請」を行い設置できるか否かの審査を行います。特小自火報が設置できる要件は、その建物が特定小規模施設であることです。

該当する建物が特定小規模施設ではない場合は、通常の基準の自動火災報知設備を設置する必要があります。通常の自動火災報知設備は有線式のため費用が大幅に上昇します。

手順3:消防設備設置届

消防設備設置届は、各種消防設備を設置した場合に設置後の試験結果を添付し消防署に届け出る申請書です。特小自火報、誘導灯、消火器、漏電火災警報、それぞれ様式が異なります。

設置した消防設備についての設置届がそれぞれ必要になります。

なお、特小自火報で中継機を設けるもの、誘導灯、漏電火災警報器の設置には「消防設備士」や「電気工事士」の国家資格が必要になります。

手順4:使用開始届の提出

使用開始届は「これから私たちがこの建物を使用します」と宣言する届出です。東京消防庁管内で消防検査を受ける場合は、使用開始届を届け出ることにより消防立会検査予約が可能になります。

民泊や旅館業施設を開設する場合は、使用開始届と消防設備設置届のいずれも必要になります。もし既存の消防設備をそのまま使用できる場合は、使用開始届の届出のみで問題ありません。

手順5:消防立会検査と検査済証の発行

使用開始届と消防設備設置届が消防署に届けられたら消防検査を受けることになります。消防設備の検査は法令の根拠に基づいた方法により実施されます。

検査で指摘事項がない場合は約1間程で検査済証が発行されます。この検査済証は旅館業許可申請で必要になることがあります。東京の場合は消防検査が無事完了したら消防署から保健所へ完了の連絡が入ります。

開設後の法定点検とメンテナンス

工事が終わっても消防設備の管理義務は続きます。民泊、旅館業施設は、消防法令上の特定用途に該当します。

特定用途は6ヶ月に1回「消防設備点検」を行い、1年に1回「点検報告書」を管轄の消防署へ届け出る必要があります。

①消防設備点検の義務と必要な資格

消防設備の点検は消防法により「消防設備士」または「消防設備点検資格者」の資格を持った者が行います。点検の内容は、設備が正常に動くか、配線に漏電がないか、設置場所は適正かなど、法令で定められた基準のとおりに実施します。

物件によっては上記に書いた資格者以外でも点検、報告ができる場合があります。

消防法施行令第三十六条第二項(資格者に点検をさせなければならない対象)の反対解釈により延べ面積1,000㎡未満の建物で「特小自火報」「消火器」「誘導標識」のみの設置であれば無資格者でも点検および届出が可能です。

もし電気工事士の免状があれば「誘導灯」も追加されるので、対象建屋がかなり広がります。

このような場合で点検報告書の書き方がわからない場合はタイムラン行政書士事務所でオンライン点検と書類の作成代行を承ります。

バッテリー寿命と設備の耐用年数

民泊や旅館業施設で使用する特小自火報や誘導灯はバッテリーが搭載されています。これらの期限は約10年で寿命を迎えます。

特小自火報はバッテリー切れが近づくと、バッテリーが切れる旨の警報を発する設計になっていますが、期限が近づいたら交換が必要になります。このエラーアラートが発せられたら速やかに電池を交換する必要があります。

また、誘導灯は本体に「ランプモニター」という警告灯が取り付けられています。このサインが出たら、誘導灯のランプとバッテリーの交換が必要です。交換後は本体に取り付けられているリセットスイッチを押せばランプが消えます。

まとめ:現場知識×法務でスムーズな民泊・旅館開業を

この記事のまとめ

  • 民泊・旅館業施設はホテルと同じ用途となり、消防法令の厳しい規制が適用される
  • 設置する設備は自火報・誘導灯・消火器・非常灯が基本の4点セット
  • 特定小規模施設用自火報(特小)が使えるかどうかで費用が大きく変わる
  • 民泊(住宅宿泊事業法)は消防事前相談記録書の取得から手続きがスタートする
  • 開設後も6ヶ月ごとの点検・年1回の報告が義務となる

今回は民泊、旅館業施設開設に必要になる消防知識について書いてみました。消防関連知をほぼ網羅している内容になっています。

戸建ての工事であれば受注から検査完了まで早くて1ヶ月程で完了できます。よろしければ工程を紹介した記事もありますのでご参照願います。

タイムランで民泊、旅館業開設でお手伝いが必要でしたらご連絡をお待ちしております。

この記事の監修・執筆者
株式会社タイムラン代表
株式会社タイムラン代表 / 消防設備士・電気工事士・行政書士
村串 大輔
2005年より消防設備業界に携わり、2011年に株式会社タイムランを設立。自ら現場に立ち、自動火災報知設備やスプリンクラー、避難器具など、電気系から消火系まであらゆる消防設備の施工を数多く手掛ける。
2023年4月にはタイムラン行政書士事務所を開設し、現場知識と法務の両面から防災をサポート。これまでに手掛けた消防関連の申請届出は3,000件以上。現場のことはお任せください。

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