火災受信機の基盤を交換してみた!【自動火災報知設備の誤作動改修】

2023.01.07
火災受信機の基盤交換

自動火災報知設備は様々な理由で誤作動を起こします。その原因の1つに火災受信機内の基板故障があります。火災受信機は100Vの電源を受電したあと受信機本体に設置しているトランスを経由してDC24Vに変換し電子制御を行っています。

基盤では様々な制御を行っていますが経年劣化や何らかの原因により回路が正常に動かなくなることがあります。基盤の故障はいくつかある誤作動原因を特定できない場合の最終手段であることが多く、あらゆる手を尽くしても頻繁に誤作動が解消しない場合は基盤が問題である確率が高くなります。

今回は基盤が原因であると特定した理由と弊社で交換を行った模様について紹介いたします。

基盤故障の原因と特定

消防整備工事のイメージ
基盤故障はなぜ起こるのか?

基盤が故障する原因についていくつかありますが、火災受信機の場合は湿気によるものがほとんどではないでしょうか。稀に雷が近くに落ちて電線を伝って受信機の基盤に回り込むこと【雷サージ】が原因で故障することも考えられます。

まず、自動火災報知設備の誤作動は多種多様な状況下で発生します。基盤がダメになる原因で一番多いのが湿気です。火災受信機設置場所が湿度が高く結露が発生する場合は高確率で基盤の損傷を疑えます。火災受信機は通常密閉された箱の中に電子部品である基盤を収容しています。比較的水分やホコリが入りにくい構造になっています。

結露が発生するような高湿度の場所では基本的に高湿度状態が継続します。例えば共同住宅のエントランスでは風除機能を担保している関係で雨が降れば湿気が溜まりやすくなります。雨が続けば高湿度状態は継続し、晴れても湿気が抜けるまでに時間がかかります。

火災受信機は防水式ではないので隙間や熱を逃がす穴から湿気が入ってきます。風除室のような湿度が安定しない場所に受信機を設けると受信機内部に湿気がたまります。受信機は密閉式なので一度湿気が入ると乾くまでに時間がかかります。このように基盤が湿ったり乾いたりを繰り返すと徐々に劣化していきます。

湿気にさらされた基盤を観察すると水の斑点やホコリが付着しています。状況が悪ければ肉眼でも基盤の損傷を疑えますので、様々な角度から誤作動を検証していき最終的に基盤が原因という特定が可能になります。設置浄行が悪い場合は10年程度で基盤が故障することもあります。

受信機交換と基盤交換

火災受信機は基盤によって制御されています。もし基盤が故障してたら改修方法として「災受信機を交換する方法」と「内部の基盤を交換する方法」があります。

受信機交換を選択する場合同時にベルやランプなどの周辺機器も交換する必要が発生します。受信機は年々性能が向上しており省エネ化により周辺機器の駆動電圧が下がっていたり、備え付けている予備電源の電流値が低いものに変わっていたりします。もし自動火災報知設備システムが設置から相当年月経過していれば全交換でも問題ありませんが、もし設置年数が浅い場合は経済的に良いとは言えません。

火災報知システムの設置年月が浅い場合は基盤交換という方法があります。各メーカーは製造年から数年間交換パーツを保有しています。在庫がなくなってしまうとそこで終わってしまうのですが、もし在庫がある場合は受信機を交換するりも経済的に対処することが可能です。

※一部の火災受信機は本体と基盤が一体となっている製品があり基盤のみの交換ができない場合があります。

費用面に関して

単純に受信機交換と基盤交換費用を比較すると、基盤交換が工数が少ないので安くなります。設置後15年以上経過している場合で、設置場所の条件が悪い場合(湿気が溜まりやすい、ホコリが溜まりやすいなど)は基盤以外の部品が駄目になっていることもあるので結果受信機を交換したほうが安くなるケースがあります。

システムリニューアルor基盤交換の決断分岐点

システムを入れ替えるか、基盤交換を行うか悩ましいところですが、1つ決断の分岐点として参考になる数字があります。それは日本自動火災報知器工業会が推奨している機器類の耐用年数です。

これは工業会が設定している耐用年数で法令規定ではないためあくまでも参考数値となります。設定している年月で機器類を交換すれば安全に問題なく使用できるというものなので一つの検討材料にするのも良いかと思います。

基盤交換作業開始

火災受信機基盤交換

この画像の基盤を交換していきます。外観上特に目立った特徴はありませんがお客様からの情報を収集した結果経験上基盤故障以外考えられなかったのでこのまま作業を進めていきます。

今回の火災受信機はP型1級というタイプで、制御基板と表示基盤の2枚を搭載した機器です。念のため制御基板、表示基盤の両方を交換していきます。

受信機基盤交換

2枚の基盤の交換を終え通電してみました。基盤によっては設定が必要なものがありますが、今回のタイプは不要だったのでそのまま各種試験を行います。結果問題なく機能していたので、時間の経過を見て誤作動が起こらなくなれば完全復旧となります。

現在工事から5ヶ月経過し1度も誤作動が起こっていないので、基盤不良でビンゴでした。

基盤の裏

外した基盤の裏側を確認すると、結露による水滴と乾いた跡、黒く変色している箇所がいくつも確認できました。築年数が浅い物件でも火災受信機の設置場所によってはこのような劣化が起こります。原因不明の誤作動が起こっている場合は基盤が原因かもしれません。

下の動画は明らかに基盤故障が原因の火災受信機です。この火災受信機もエントランスに設置されていました。ご参考いただければ幸いです。

受信機の調子がおかしいと感じたら

受信機の調子が悪いと感じましたらご連絡ください。受信機交換をせずに基盤交換で対応できる場合があります。物件の状況や設置年数などを考慮して適切な改修をご提案いたします。

参考:火災報知器の誤作動原因と対処法  消防法

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