エレベータ用の防火設備について【竪穴区画と自動閉鎖させる制御盤】

エレベータ用の防火設備について【竪穴区画と自動閉鎖させる制御盤】

竪穴区画の防火設備

建築物は火災時に他の場所への延焼を防ぐために防火区画を設けることになっています。防火区画は4つの定義がありそれぞれの条件に該当する部分について一定時間以上の耐火性能を持った床、壁を設けることになります。

防火区画
竪穴区画 面積区画 異種用途区画 高層区画

エレベターシャフト、階段、エスカレーター、吹き抜け、ダクトスペースは竪穴区画に該当するため防火区画が必要になります。

エレベーター、階段、エスカレーターなどの竪穴区画は、建物の運用上壁や床をコンクリートで覆ってしまうと使用できない又は、非常に使いにくくなってしまいます。そのような場合は、自動閉鎖式の防火扉やシャッターが設置されます。

大型ショッピングセンターなどの吹き抜けがある施設の天井周辺をよく見てみると、シャッターが埋まっています。本来であれば防火区画が必要な場所ですが、火災が発生時に防火設備を自動的に落とすための煙感知器が設置されており、煙感知器と連動してシャッターが自動的に落ちてくる仕組みになっています。

エレベーター

エレベーターシャフト内部で火災が発生した場合が、上昇気流とともに煙が上階まで瞬く間に広がってしまいます。そうなると、上階にいる人がエレベーターの入り口から煙が逆流し巻かれてしまいます。

そこで煙を逆流させないための措置が必要になります。そもそもエレベーターの扉は金属でできており、耐火性能を持っていることがほとんどですが、隙間があるため遮煙性能がない場合に画像のような防火設備が設置されています。

近年では画像のような防火設備を設置することはほとんどありません。遮煙を行うことが目的のため、近年では防炎スクリーンを設置することが主流になっています。煙感知器に連動して自動的に扉を塞ぎます。

新し目のエレーベーターは、扉自体に防火性能と遮煙性能を持った物があります。このようなエレベーターの入り口には防火設備も防炎スクリーンも設置する必要はありません。エレベーターの判別方法としては、エレベーターの扉に「遮煙性能を有する」旨の表示が確認できます。

特定防火設備のエレベーター扉

自動的に防火区画を形成する自動閉鎖装置

冒頭に煙感知器として自動的に防火区画を形成させる仕組みについて書きました。こちらの装置は「連動制御盤」と呼ばれるシステムを制御するための親機とシステムを作動させる「煙感知器」、煙感知器が反応したら自動的に扉やシャッターを作動させる機構である「自動閉鎖装置」から構成されます。


これらの装置は一見自動火災報知設備と似ていますが、消防設備ではなく建築設備となります。防火区画は建築基準法施行令により定義、運用されており、消防法令の適用ではありません。

ただし、消防法令に基づいて設置されている自動火災報知設備の火災受信機に連動機能が設けられている「複合型受信機」がありますので、こちらの設置については消防設備点検報告書に記載されることがあります。

自動火災報知設備とは別に単体の連動制御盤がありますので、こちらの設備については消防法令による点検義務はありません。2016年6月の建築基準法改正に伴い防火設備点検を実施する必要があります。

連動制御盤
単体の連動操作盤

竪穴区画が免除される部分

まず、3階建てまでの一軒家【200㎡以内】、長屋【200㎡以内】、共同住宅のメゾネット部分、併用住宅の住宅部分。兼用住宅とは事務所と住宅が一緒になったもの。

次に、内装仕上、下地を不燃材料とし、1階~2階、地下1階~1階の竪穴区画です
よく店舗とかではこの手法が使われています。

新築物件は確認申請をするため問題ありませんが、既存物件の改修で竪穴区画が崩れてしまっている場合があるのでご注意が必要です。

建築基準施行令112条

【防火区画/竪穴区画】

11 主要構造部を準耐火構造とした建築物又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は三階以上の階に居室を有するもののたて穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が二以上であるもの、吹抜きとなつている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該たて穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第十三項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するたて穴部分については、この限りでない。

 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの

 階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が三以下で、かつ、床面積の合計が二百平方メートル以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

12 三階を病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。次項において同じ。)又は児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものに限る。同項において同じ。)の用途に供する建築物のうち階数が三で延べ面積が二百平方メートル未満のもの(前項に規定する建築物を除く。)たて穴部分については、当該たて穴部分以外の部分と間仕切壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた建築物のたて穴部分については、当該防火設備に代えて、十分間防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後十分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。第十九項及び第百二十一条第四項第一号において同じ。)で区画することができる。

13 三階を法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途(病院、診療所又は児童福祉施設等を除く。)に供する建築物のうち階数が三で延べ面積が二百平方メートル未満のもの(第十一項に規定する建築物を除く。)たて穴部分については、当該たて穴部分以外の部分と間仕切壁又は戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)で区画しなければならない。

14たて穴部分及びこれに接する他のたて穴部分(いずれも第一項第一号に該当する建築物の部分又は階段室の部分等であるものに限る。)が次に掲げる基準に適合する場合においては、これらのたて穴部分を一のたて穴部分とみなして、前三項の規定を適用する。 当該たて穴部分及び他のたて穴部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げが準不燃材料でされ、かつ、その下地が準不燃材料で造られたものであること。 当該たて穴部分と当該他のたて穴部分とが用途上区画することができないものであること。

15 第十二項及び第十三項の規定は、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物として、壁及び天井の仕上げに用いる材料の種類並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるもののたて穴部分については、適用しない。

e-Gov:建築基準施行令112条

参考:防火設備の連動制御盤と3種煙感知器について

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