動力消防ポンプを設置してみた

動力消防ポンプを設置してみた
動力消防ポンプ
動力消防ポンプ

動力消防ポンプとは

動力消防ポンプはエンジンを搭載している消防用のポンプであります。条件がありますが屋内外消火栓の代替設備として設置することが可能です。動力消防ポンプは大まかに下記の3パターンで使用されます。

  • 消防ポンプ自動車として車に設置して使う
  • 可搬可能な台車に載せて使う
  • ポンプ本体を地面に据え置いて使う

それ以外の使用方法があるのかどうか不明ですが大抵はこの3パターンになるのかと思います。弊社では台車に設置する場合と据え置き型を取扱っています。

動力消防ポンプスタンド
車載式の動力消防ポンプ

車載式の動力消防ポンプの場合は専用の台車に固定され消防ホースも収納できるスタイルとなっています。消防用ホースは1本20mで5本あり100mまでの包含が可能であります。

動力消防ポンプで使用する場合のホース水平距離は100mまでという条件があります。100mを超える場合は屋内消火栓や屋外消火栓を設置することが必要になります。

規格放水量とは

消防法により規格放水量が設定されています。屋内消火栓の設置が必要な場合は0.2㎥/分、屋外消火栓の設置が必要な場合は0.4㎥/分以上の放水量とすることが求められています。

内外栓の規格放水量の違い

屋内消火栓の代替として設置   0.2㎥/分
屋外消火栓の代替として設置   0.4㎥/分

3 動力消防ポンプ設備は、法第二十一条の十六の三第一項の技術上の規格として定められた放水量(次項において「規格放水量」という。)が第一項第一号に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものにあつては〇・二立方メートル毎分以上、同項第二号に掲げる建築物に設置するものにあつては〇・四立方メートル毎分以上であるものとする。

消防法施工令20条の3項

動力消防ポンプの規格放水量

動力消防ポンプには性能の等級が定められています。ハイスペックのものからロースペックのものまで条件にあったものを選定します。当然にスペックが高くなれば金額も高価なものになるので、物件の条件にあったポンプ選ぶとよいのではないでしょうか。

ポンプの等級と規格スペック

ポンプの等級 規格放水圧力 規格放水量
 A1 0.85【MPa】 2.8  【㎥/分】以上
 A2 0.85【MPa】 2.0  【㎥/分】以上
 B1 0.85【MPa】 1.5  【㎥/分】以上
 B2 0.7【MPa】 1.0  【㎥/分】以上
 B3 0.55【MPa】 0.5  【㎥/分】以上
 C1 0.5【MPa】 0.35【㎥/分】以上
 C2 0.4【MPa】 0.2  【㎥/分】以上

D級のポンプもあるのですが規格放水量が0.2㎥以上ないため消防用としては使用することができませんのでご注意くださいませ。

どのポンプを選ぶかは次に書く水源の位置で決めることができます。

水源の位置と水量

水源とは動力消防ポンプで放水するための水であります。この水源のについても消防法により決められています。

まず、動力消防ポンプを設置する場合、水源からの【水平距離】が半径100m以下に設置しなければいけないということになっています。なのでまず、水源を設置する場所を決めます。次に水源の設置する距離との関係により、設置する動力消防ポンプの等級を決めることができます。

動力消防ポンプの規格放水量と水源の距離

動力消防ポンプの規格放水量 水平距離
 0.5㎥/分 以上 水源からの半径 100m 以下
 0.4㎥以上~0.5㎥/分 未満 水源からの半径 40m   以下
 0.4㎥/分 未満 水源からの半径 25m   以下

水源の場所が決まったら建物の全てが包含できる距離で一番遠い距離を調べます。その距離が100m以下、40m以下または25m以下なのかで使用する動力消防ポンプを選ぶことになります。

4 前三項に規定するもののほか、動力消防ポンプ設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。一 動力消防ポンプ設備の水源は、防火対象物の各部分から一の水源までの水平距離が、当該動力消防ポンプの規格放水量が〇・五立方メートル毎分以上のものにあつては百メートル以下、〇・四立方メートル毎分以上〇・五立方メートル毎分未満のものにあつては四十メートル以下、〇・四立方メートル毎分未満のものにあつては二十五メートル以下となるように設けること。

消防法施行令第20条4項の1

使用するホースの長さと動力消防ポンプの関係

動力消防ポンプの規格放水量 ホースの長さ
 0.5㎥/分 以上 水源からの半径 100m 以下
 0.4㎥以上~0.5㎥/分 未満 水源からの半径 40m   以下
 0.4㎥/分 未満 水源からの半径 25m   以下

ホースの長さの規定は水源の規定と同じ数値となっています。

二 動力消防ポンプ設備の消防用ホースの長さは、当該動力消防ポンプ設備の水源からの水平距離が当該動力消防ポンプの規格放水量が〇・五立方メートル毎分以上のものにあつては百メートル、〇・四立方メートル毎分以上〇・五立方メートル毎分未満のものにあつては四十メートル、〇・四立方メートル毎分未満のものにあつては二十五メートルの範囲内の当該防火対象物の各部分に有効に放水することができる長さとすること。

消防法施行令第20条4項の2

水源の水量について

水源の水量は選定した動力消防ポンプの規格放水量で20分間放水できる量ということになっています。例えばB3級のポンプを選んだ場合は毎分0.5㎥以上規格放水量ということになっているため

0.5㎥×20分間=10㎥  

ということで10㎥以上の水源が確保されている必要があります。
20㎥以上になる場合は20㎥の水量でOKということになっています
10㎥以上の水が放水に使用できるようにしなければなりません。水槽の大きさではなく水量です。水槽には有効水量があるため、10㎥の水槽を使用する場合は有効水量が10㎥よりも少ない有効水量になってしまいます。なので12㎥など大きめの水槽を選ぶことが必要になります。

三 水源は、その水量が当該動力消防ポンプを使用した場合に規格放水量で二十分間放水することができる量(その量が二十立方メートル以上となることとなる場合にあつては、二十立方メートル)以上の量となるように設けること。

消防法施行令第20条4項の2

事前協議→着工届提出→施工

基礎打ち
水槽をのせる基礎を打つ

設計し仕様が確定したら管轄の消防署へ着工届【設計書】を提出します。しっかりと協議することで事前に設計事項や法令、またお互いの認識に誤り、モレがないか確認します。着工届提出後、10日間の審査期間を経て問題なければ着工する運びとなります。

水槽を設置後消防ポンプを格納する倉庫を設置

動力消防ポンプホース

最終仕様が確定後、管轄消防署との協議通りに作業を進めていきます。

その他付随する工事関係

消防ポンプはエンジンが搭載されているポンプのため水源+給水管+ホース+ノズルがあれば完結してしまうシンプルな消火設備であります。ただ、水槽とポンプ一式設置すればいいということではありません。それはどのような工事かといいますと、、

  • ポンプのセルスイッチを使えるようにするための電源工事
  • ポンプ格納庫に設置する換気扇関連の工事
  • 水槽に水を常に満タンにするための水道工事

であります。

セルスイッチを使えるようにする電気工事

ポンプ起動には2通りありまして、セルスターターを使う場合と、手動で紐を引っ張って始動するケースです。セルスターターはスイッチをクルッと回せば子供でも簡単に起動させることができます。が、しかし、、手動で起動させるためには程度の力で紐を一気に引っ張る必要があります。

動力消防ポンプはセルスタートさせるためにバッテリーを積んでいますが、そのままの状態で保管しておくとバッテリーが上がってしまいます。

ワタクシどもはエンジンをかけるコツが分かっているので比較的簡単に手動始動させることができますが、緊急時の慌ただしい中、訓練以外さわったことのない機械を動かすのは至難の業なのではないでしょうか。

そのため、ポンプのバッテリーが上がらないようにするための電気工事があります。

格納庫に設置する換気扇工事

ポンプ起動時は2ストロークエンジンのため、結構な排気ガスを放出します。格納庫内で使用する場合しっかりと換気しないとエンジンが停止してしまう恐れがあります。一旦格納庫から出して使用する場合は問題ありませんが、内部でそのまま使用する場合は要注意です。

水槽に自動的に満水にするための工事

水槽を自動的に満水にするための給水管工事があります。水道から水源までの配管工事と水槽内にボールタップを設置する工事が必要になります。

これらの工事が必要かどうかはケースバイケースですが、仕様を決める際に各方面にしっかりと事前協議をしておく必要があります。

完成→設置届提出→消防検査

放水テスト

工事完了がしたら4日以内に消防署へ『設置届』を提出しなければなりません。この書類は事前に協議した内容どおり設置して、試験をしたらコレコレこんな結果になりました。異常ありません。という内容のものであります。

消防検査

改修工事の場合は設置届を提出したタイミングで消防立会検査の予約を入れることになります。※自治体によりいろいろなケースがある

消防立会い検査では『設置届』に記載した試験結果と同じ数値、または消防ほうで定められている基準以上の数値が確保されているかを確認します。問題がなければ後日消防署より『試験結果通知書』が発行されることになり全ての工程が完了いたします。

あとは6ヶ月に1度の消防設備点検でしっかりとメンテナンスをしていくことになります。

まとめ

  • 動力消防ポンプはエンジンを積んだ消防ポンプ
  • 小型のため可搬可能
  • 規格放水量を基に設計
  • 水源の距離でポンプのスペックが決まる
  • 水源水量はポンプ規定水量かける20分間
  • 水槽の大きさに気をつける
  • 付随する工事がある
  • エンストに注意

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