統括防火管理者は誰が選任するのか|防火管理者との違いと実務の現実を解説

2023.02.20
結論
法令上は「各防火管理者が協議して定める」。実務上はビルオーナー側から選任されるケースがほとんど。この乖離を理解していないと、査察で思わぬ指摘を受けることがある。

「統括防火管理者はビル側が選任するものでは?」この認識は実務上は正しいですが、消防法の条文をそのまま読むと少し違います。法令上は「ビル側が選任する」とは書かれておらず、「各防火管理者が協議して定める」とされています。この違いが、査察でテナント側に指摘が入る場面で混乱を生む原因になっています。

この記事では防火管理者と統括防火管理者の違いから、選任の実務まで一通り整理します。

防火管理者と統括防火管理者の違い

火災通報装置工事完成画像
防火管理者 統括防火管理者
管理範囲 自分の権限が及ぶ部分(専有部など) 防火対象物全体
選任者 各管理権原者 各防火管理者が協議して定める
資格要件 防火管理者講習修了者など 防火管理者の資格があれば可
主な業務 専有部の消防計画作成・訓練実施 全体消防計画の統括・避難施設の管理

統括防火管理者は新たな資格が必要なわけではなく、防火管理者の資格を持っていれば選任できます。ただし業務の性質上、建物全体の設備情報や図面を持つビルオーナー側でなければ実質的に遂行困難な業務が多くあります。

COLUMN

統括防火管理者は主にビルの所有者サイドで選任されるケースがほとんどです。ビルオーナー、ビルオーナー従業員、管理会社、外部委託などありますがテナントサイドで選任されるケースはほとんど見たことがありません。

防火管理社は自分の占有するスペースの防火管理が求められます。占有場所以外の管理をすることになると様々な障壁があり適正な管理が見込めないことが想定できます。

防火管理の3パターンと統括の要否

スプリンクラー設備

建物の使われ方によって防火管理の形態は3つに分かれます。自分が関わる建物がどのパターンかを先に確認してください。

パターン1

単一権限者がビル全体を使用

統括:不要

オーナーが建屋すべてを使用。防火管理者1名で全体を管理できる。最もシンプルな形態。

パターン2

テナント入居あり・ビル側が一括管理

統括:不要

別権限テナントをビル側が管理する形。責任の所在が曖昧になりやすく、一般的ではない。地域によっては認められないケースもある。

パターン3

テナント各々が専有部を管理

統括:必要

実務上のほぼすべて。各テナントが防火管理者を選任し、統括防火管理者が全体を統括する。責任の所在が明確になる。

COLUMN

単一権原、または複数権原でオーナー側がテナントの防火管理までやってくれる場合は統括防火管理者の選任は不要になります。統括防火管理者が必要な場合は複合用途防火対象物で管理権限がそれぞれ異なっている時です。

 

もし、テナントとして入居している場合で統括防火管理者もやって欲しいと頼まれた場合は、全体についての責任も負う可能性出てくるので十分に注意する必要があります。

統括防火管理者が必要な防火対象物

池袋の高層ビル

建物の高さは31mを超えますか?

統括防火管理者の選任が必要です

高層建築物(高さ31m超)で管理権限が分かれている場合、用途・規模にかかわらず選任義務があります。

用途・規模で確認が必要です

以下のいずれかに該当する場合は選任が必要です。

  • 地下街:消防長又は消防署長が指定するもの
  • 準地下街:特定用途が入居するもの
  • 避難困難者施設(6項ロ):地階を除く階数が3以上かつ収容人員10人以上
  • 特定防火対象物:地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上
  • 非特定用途防火対象物:地階を除く階数が5以上で収容人員50人以上

統括防火管理者が必要な防火対象物を簡単に下の表にまとめます。

下の防火対象物で管理について権限が分かれているもの
高層建築物 【高さが31mを超えるもの】
地下街 【消防長又は消防署長が指定するもの】
準地下街 【特定用途が入居するもの】
避難困難者施設【6項ロ】 地階を除く階数が3以上かつ収容人員10人以上
特定防火対象物 地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上
非特定用途防火対象物 地階を除く階数が5以上で収容人員50人以上

 

消防法 第8条の2施行令第3条の3

統括防火管理者の選任義務・対象建物・業務範囲を規定。「協議して定める」という文言が、ビル側に限定されない根拠となっている。

条文全文はe-Gov法令検索で確認

統括防火管理者は誰が選任するのか?

高天井

統括防火管理者は各防火管理者の中から協議により選任するということを記載しました。運用上、便宜上ではビルオーナー側で選任することが望ましいとされています。

理由としては、防火管理者の仕事のうち建物の消防設備の点検や整備を行わせるのはテナント側ではなくビルオーナー側であることが一般的だからです。しかし、消防法8条の2の条文を見てみると「全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者を協議して定め」という文言があります。

なので法令上では統括防火管理者はビル側で選任しなければならないということではなく、各テナントから選任された防火管理者で協議して統括防火管理者を定めるという事になっています。

一旦話がそれますが、複合ビルのテナント側に消防査察が入った場合での指摘事項に「統括防火管理者を選任すること」という一筆が加えられることがあります。

統括防火管理者はオーナー側では?という疑問があると思いますが、これは消防条8条の2の条文を解釈すると、統括防火管理者は「協議により定め」であるためテナント防火管理者に対して他の防火管理者と協議して統括防火管理者をたててくださいという指摘です。

※私はビルオーナーサイド以外で選任された統括防火管理者を見たことがありません。

まとめ

建物の形態によって防火管理の方法は変わり、複合用途のテナントビルでは統括防火管理者の選任が必要になります。法令上は「協議して定める」とされており、ビル側に限定されているわけではありませんが、業務の性質上ほぼすべてのケースでビルオーナー側が担うのが実務の現実です。

テナント側に査察で「統括防火管理者を選任すること」という指摘が入る場合も、「ビル側と協議して手続きを完了させてください」という意味で受け取るのが正確な解釈です。この点を理解しておくだけで、査察当日の対応がスムーズになります。

統括防火管理者の選任届の作成や手続きでお困りの場合は、また防火管理についてお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。

この記事の監修・執筆者
株式会社タイムラン代表
株式会社タイムラン代表 / 消防設備士・電気工事士・行政書士
村串 大輔
2005年より消防設備業界に携わり、2011年に株式会社タイムランを設立。自ら現場に立ち、自動火災報知設備やスプリンクラー、避難器具など、電気系から消火系まであらゆる消防設備の施工を数多く手掛ける。
2023年4月にはタイムラン行政書士事務所を開設し、現場知識と法務の両面から防災をサポート。これまでに手掛けた消防関連の申請届出は3,000件以上。現場のことはお任せください。
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