厨房が階段・避難口5m以内でフード消火が必要な理由は?火災予防条例を解説

2026.09.16
フード消火ノズル

3秒でわかるこの記事の結論

  • 条例自体に「5m以内=消火設備が必要」という直接の規定はない
  • 本来は「避難口付近=厨房設置不可」だが、例外規定(避難に支障がない状態)を適用するためにフード消火設備が求められる
  • 具体的な「5m」という数値は、東京消防庁の予防事務審査基準に基づく

通常、フード消火装置を設置することになる場合の基準として、厨房内に設置する厨房機器の入力が350キロワット以上になるものに設置することが条例によって定められています。

フード消火装置はこの基準によって設置することがベースとなります。しかし、これ以外に設置が求められる場合があります。それは、厨房が階段や避難口から5メートル以内にあるというものです。

この決まりについて、火災予防条例の条文を読んでもなかなか見つけることができないと言うことになるかと思います。それは火災予防条例の厨房設備の部分に直接書かれていないためです。

まずは、どのような感じで書いているのかを説明して行きたいと思います。

⚠️ 注意

本記事は東京消防庁の基準をベースに解説しています

本記事で扱う「5m」という具体的な数値は、東京消防庁の予防事務審査基準に由来するものです。火災予防条例は各自治体の条例であり、条番号や運用は自治体ごとに異なります。実際の設置判断にあたっては、必ず所轄の消防署にご確認ください。

この記事の核 ・ 根拠が三層に分かれている

根拠となる文書 そこに書かれていること 距離の記載
第1層 東京都火災予防条例
第3条の2(厨房設備)
離隔距離、天蓋、排気ダクトなど設備そのものの基準。「階段」「避難口」は出てきません。末尾の準用規定で、炉の条文へ話が飛びます。 なし
第2層 同 条例
第3条第1項第1号の2(炉)
準用先。ここで初めて「階段、避難口等を避ける位置」が登場します。ただし、どこまで離すかは書かれていません。 なし
第3層 東京消防庁 予防事務審査基準
第3章第1節第1項 ⑶(火気設備等の共通事項)
「階段、避難口、非常用エレベーターのホールの防火戸及びバルコニー形式の特別避難階段のバルコニーに面する部位から概ね水平距離5m以内の部分」。数字が出てくるのはここだけです。 5m
帰結

条例には「5m以内ならフード消火設備を設けること」という条文はありません。5m以内は原則として厨房設備を置けない位置であり、同基準のただし書き③「設置に際し、避難に支障のない場合はこれによらないことができる」を満たすための措置として、フード等用簡易自動消火装置が求められる、という構造です。

まず、火災予防条例の厨房設備の項目を見ていくと、階段や避難口に関する記述は一言もありません。条文をそのまま読んでいくと、「ここに書かれていないものは炉の基準を準用する」と書かれています。

炉の基準は厨房設備の一つ前に書かれているので、それを読んでみると、「階段、避難口等を避ける位置に設けること。」という文言がありました。ここで初めて、厨房設備は階段や避難口を避けた位置に設置することが求められると分かります。

次に、「階段、避難口等を避ける位置」とはどのような場所を指すのか、その定義を探していくと、予防事務審査基準(東京消防庁)に記載がありました。予防事務審査基準によると、「設備の設置により避難に支障が生じる位置のことである」と書かれています。

避難に支障が出るため、階段や避難口の付近には厨房設備を設けてはならない、という決まりです。

本来、階段や避難口の付近には厨房設備を設けることは認められていません。しかし、例外規定として、次の場合には設置しても問題ないと書かれています。

ただし書き(設置基準の除外規定)
① 個人の住宅及び共同住宅等の住居内に設置する場合

② 不燃区画室に設置する場合

③ 設置に際し、避難に支障がない場合にはこれによらないことができる

つまり、厨房設備が階段や避難口から5メートル以内にある場合は、フード消火装置を設置し、例外規定の③を適用することで、避難に支障がない状況を消防署に認めてもらうという流れになります。

階段・避難口から「概ね」5メートルという書き方

誘導灯画像
避難口

審査基準の文言をよく見ると、「概ね水平距離5m以内」と書かれています。この「概ね」は消防法令でしばしば出てくる表現で、厳密な線引きではなく目安を示すときに使われます。

私の経験上になりますが、この「概ね5メートル以内」という書き方では、実務上はおおむね5メートルのところで判断が分かれています。

5メートル以内であれば適用され、5.1メートルであれば適用されないケースが多い、という感覚です。

ただし、これは「5.1メートルあれば何もしなくてよい」という意味ではありません。距離はあくまで判断の入口です。

最終的に問われているのは、ただし書き③の「避難に支障がない」と言えるかどうかであって、5メートルという数字はその判断を助けるための目安にすぎません。

設置が決まってからの流れ

フード消火装置の設置が決まった後は、着工届を出し、工事を行い設置届を出して消防の立会検査を受けるという流れになります。

この装置は、フード内に設けた受熱部が火災の熱を感知して作動し、消火剤を自動で放出します。そして、その放出と連動してガス供給を遮断し、排気ファンを停止させる必要があります

ガス遮断弁
ガス遮断弁

つまり、消火装置を単体で取り付ければ終わり、という設備ではありません。確実に火の元を断つために、厨房機器側やダクト側の保安装置との接続が伴います。

建物によっては、防災センターや管理室への表示連携も必要になります。

さらに、消火装置本体の工事と、連動部分の工事が別会社の対応になっているケースがあります。ガス遮断装置は設備業者、ファン停止は電気業者、といった分かれ方です。

この場合、どこまでが誰の工事範囲なのかを早い段階で整理しておかないと、検査の直前になって連動が取れていないことが判明する、ということが起こります。

工程を組む段階で、工事区分の確認をしておくことが重要です。

装置の構成の詳細については、別の記事で網羅的に扱っていますので、そちらをご覧ください。

現場のポイント

工事区分の整理でトラブルを防ぐ

フード消火装置は本体を設置するだけでは完了しません。ガス遮断装置(設備業者)やファン停止(電気業者)との連動が必要になります。

これらは施工会社が分かれることが多いため、着工前に「どこまでが誰の担当か」を整理しておかないと、検査直前になって連動が取れていないというトラブルにつながります。

各主要都市の火災予防条例を確認

各都市の条例を確認してみましたが、条文中に「厨房設備の位置は炉の基準を準用する」「階段、避難口等の附近で避難の支障となる位置に設けないこと」が書かれていました。

表にまとめてみます。

都市 「階段、避難口等を避ける位置」の規定 5m基準の運用
東京都 炉の規定を準用(避難の支障となる位置を避ける) 東京消防庁 予防事務審査基準に「概ね5m」と明記
札幌市/仙台市
さいたま市/千葉市
横浜市/名古屋市
大阪市/神戸市
岡山市/広島市
福岡市
炉の規定を準用(同上) 各自治体の審査基準・指導指針による
⚠️ 注意

条例の記載があっても運用基準は自治体ごとに異なります

上記の都市には、いずれも東京都と同様に「階段、避難口等を避ける位置」という趣旨の規定が火災予防条例に置かれています。ただし、東京都の予防事務審査基準と同じ5メートル基準が適用されるとは限りません。具体的な距離の運用は自治体ごとの審査基準や指導指針によって異なるため、実際の設置判断にあたっては必ず管轄の消防署にご確認ください。

まとめ

厨房が階段や避難口から5メートル以内にあるときに、フード消火装置を求められる。その根拠は条例の一箇所にまとまっているわけではなく、三つの文書に分かれて置かれていました。

  • 東京都火災予防条例 第3条の2(厨房設備) 階段も避難口も出てきません。末尾の準用規定で、炉の条文へ送られます

  • 同 第3条第1項第1号の2(炉)「階段、避難口等を避ける位置に設けること」。ただし、どこまで離すかは書かれていません

  • 東京消防庁 予防事務審査基準(火気設備等の共通事項)— 「概ね水平距離5m以内」。数字が出てくるのは、ここだけです

そのうえで押さえておきたいのは、条例に「5メートル以内ならフード消火装置を設けること」と書かれた条文は存在しない、ということです。

階段や避難口から5メートル以内は本来、厨房設備を置いてはいけない場所です。それでもそこに置くために、ただし書き③の「避難に支障がないを満たす措置としてフード消火装置を設ける」というものです。

厨房のレイアウトを決める前に、階段と避難口からの距離を一度測っておくことをお勧めいたします。

この記事の監修・執筆者
株式会社タイムラン代表
株式会社タイムラン 代表消防設備士 / 行政書士
村串 大輔 2005年より消防設備業に携わり、2011年に株式会社タイムランを設立。自ら現場に立ち、自動火災報知設備やスプリンクラー、避難器具など、電気系から消火系まであらゆる消防設備の施工を数多く手掛ける。 2023年4月にはタイムラン行政書士事務所を開設し、現場知識と法務の両面から防災をサポート。これまでに手掛けた消防関連の申請届出は3,000件以上。現場のことはお任せください。

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