INTERSCHUTZ 2026|ドイツ・ハノーファーの消防見本市レポート①

2026.07.08

ドイツ・ハノーファーで開催された約5年に一度の国際的な消防見本市「INTERSCHUTZ 2026(インターシュッツ)」に参加しました。

今回の視察の目的は世界中の消防や防災に関する考え方や技術を学ぶことにより、普段の消防設備工事や点検業務、申請事務作業の効率化などに活かすことであり、実際に現地で体験することで得られる経験が今後の役に立つと信じて参加しました。そして、私は入社して間もないですが、経験が浅い今だからこそ得られる視点もあると考えています。

この記事では、消防、救急、防災、災害対応、火災予防、通信、個人防護装備など、消防・防災分野を幅広く扱うINTERSCHUTZ 2026の概要や、会場の雰囲気について紹介します。

IINTERSCHUTZ 2026とは|消防・防災分野の国際展示会

項目内容
名称INTERSCHUTZ 2026 (公式ホームページ)
会期2026年6月1日〜6月6日(視察日:6月1日〜6月3日)
会場ドイツ・ハノーファー 
主催Deutsche Messe
主な内容消防、消火、救助、救急、防災、危機管理、火災予防、個人防護装備、防護資機材、指令通信システム
出展者数1,772社
会場面積120,000平方メートル
参加国数55か国

会場面積は120,000平方メートルで、東京ドーム約2.5個分に相当します。数字で見ても大きな規模ですが、実際に現地を歩くと、その広さをより強く実感しました。

日本からハノーファー・メッセ駅までの道のり

日本からは、まず飛行機でフランクフルト空港へ向かいました。そこからフランクフルト中央駅へ移動し、ICE(高速鉄道)を利用してハノーファー・メッセ駅まで向かいます。

飛行機は約15時間、ICEは約3時間かかり、会場に到着するまでとても長い道のりでした。フランクフルト駅のホームでは参加者と思われる団体が、ハノーファー行きの列車を待っていました。

ハノーファー・メッセ駅で降りると、展示会場まで長い歩行者専用通路が続いています。この通路を歩いている時点で、いよいよ世界規模の展示会に来たのだという実感が湧いてきました。

フランクフルト駅で見かけた団体も、やはりINTERSCHUTZの参加者だったようで、ビールの瓶を片手に通路を進んでいました。 会場のエントランスには多くの国旗が掲げられており、国際的な展示会らしい雰囲気がありました。

日本の国旗は見当たりませんでしたが、世界中から来場者や企業が集まっていることを感じさせる光景でした。

荷物検査を通過した後、事前にメールで送られてきたチケットのQRコードを機械にかざすと、ネームタグが発行されます。2日目以降はそのネームタグにあるQRコードをかざせば入場できます。

INTERSCHUTZ 2026の会場構成と展示ホール

各ホールに設置されていた案内図

エントランスゲートを通過すると目の前にホール13がありました。主要ホールのテーマをまとめると、以下のようになります。

ホール主なテーマ
12消防
13火災予防、消防
14防災設備・装備
15防災設備・装備
16防災設備・装備、通信・管理制御センター
17人命救助
26救急
27消防
屋外展示消防車両、実演展示など

消防・防災業界の各分野が、ホールごとにまとまっているような構成です。

普段の業務に直結する分野は火災予防であるため、今回はホール13を中心に見学しました。一方で、消防や救助などの分野にも興味深い展示が多くありました。

普段は意識していませんでしたが、消防業界にはこれほど多くの分野が存在するのだと改めて気づかされました。

今回、展示ブースで話を聞かせていただいた内容や、製品に関する考え方については、次回以降の記事で詳しく紹介したいと思います。

ホール12

TFA(ハンブルク消防・救助隊)のブースでは、Mayday Rescue Challengeという実践型の救助訓練イベントが実施されていました。1

これは倒れた消防士を実際の活動に近い条件の下で救助するというチャレンジで、以下の3つのシチュエーションが用意されています。

1.視界が悪く、物が多い室内での救助

2.階段や障害物のある狭い通路での救助

3.マンホールのような縦穴からの迅速かつ安全な救助

参加者が真剣に取り組んでおり、近くにいると荒い呼吸音が聞こえてくるため、消火・救助活動の過酷さが伝わってきます。

会場の説明文をもとに、1つ目のシチュエーションを解説します。

2023年12月16日にドイツ・ハンブルクのヴィンターフーデで実際に発生した集合住宅火災を再現しています。

この火災では、5人が負傷し、救助完了までに約20分を要しました。

現場は写真の通り、大量のものやゴミが溜め込まれた居室で、隊員の方向確認を困難にしていました。また、室内には厚く黒い高圧の煙が充満していて、視界はほぼゼロの状態でした。

集合住宅の2階の1室で火災が発生し、階段室からC ホースを使用して侵入し、内部から消火活動を開始しました。

※ドイツでは、Aホースが直径110mm、Bホースが直径75mmのようにホースが標準化されており、Cホースは直径42mmまたは52mmのものを指すようです。23日本では大容量泡放水砲用ホース以外のホースは、呼称で表されており、例えば50は内径51mm以上54mm以下、40は内径38mm以上41mm以下と定められています。4

消火活動開始から数分後、熱さのため、隊員達は共同で退避を開始しましたが、一人の隊員が膝の高さほどに積もったゴミで足をすべらせて転倒し、ホースや隊長との接触を失ってしまいます。

その際に小さな浴室に入り込んでしまい、気づかないうちに扉がしまったことで、完全に閉じ込められる形となりました。

閉じ込められた隊員は空気を節約するため、床に伏せてデマンド換気を行いました。デマンド換気はおそらくウィール呼吸法と呼ばれるもので、ボンベを必要なときだけ開けて呼吸することで、空気を温存するための操作を指しています。

その後さらに空気供給が限界に達したため、呼吸器を外す状況にまで追い込まれましたが、最終的には、緊急信号発信機によって発見され、救出に至りました。

2つめのシチュエーション
参加者は装備品をつけてこの通路を進み、救助を行います。

ホール13

ホール13は、消防設備や火災予防設備に関連する企業の展示が中心です。

火災予防設備の展示は、警報設備から消火設備まで幅広いですが、特に消防ポンプや逆止弁、スプリンクラーヘッド、消防ホースなど水系設備に関連する展示が目立ちました。

消防ポンプは据置型のものから、消防車に搭載するものまで様々な用途のものが展示されています。

展示会ではエンジンとポンプが一体化した製品が非常に多いのが印象的でした。日本では電動式のものが主流ですが、これは日本の電力に対する信頼度が大きいことが推察できます。

海外では電力を他国に売買している状況もあるので、このようなことが影響しているのかもしれません。

普段、白いホースしか目にすることがないため、豊富な色のラインナップが新鮮です。

日本でもキンパイ商事という企業がカラーホースを販売していますが、海外の製品とは色合いが異なっています。ヨーロッパでは曇天が比較的多く、太陽の高度が低いので、クスミ系のおちついた色が好まれると言われてます。

ホースを見てみてもそれぞれ落ち着いた色のラインナップとなっており、上質な印象を感じます。

ホール14・15

KNIPEXの工具が収納されたアルミニウム工具ケース

MUNK社の交通事故対応用の工具箱です。

DIN 14800-13(ドイツの消防車両に搭載する交通事故対応用工具箱について定めた規格)に準拠して製造されています。

重量:21kg

ホール17

SIEMON DiveTech社は、ドイツの潜水技術・水中作業装備の専門会社であり、水難救助や特殊災害に対応する装備として印象に残りました。

ホール26

PARATECH社のエアーリフティングバッグ、二重構造になっているのが特徴的です。

PARATECH社は、アメリカの救助用資機材メーカーで、エアーリフティングバッグや車両・構造物の固定器具、非常用の強制侵入工具などを扱っています。

リフト高さ:66cm

リフト許容荷重:33.7t

設置器具含む重量:24.57kg

STIHL社のバッテリー式切断機、エンジン式と異なり屋内や酸素不足が心配される救助現場などでも扱うことが可能です。

用途:コンクリート、石材、レンガ、鉄筋の切断

刃物径:350mm

最大切り込み深さ:125mm

ホール27

Drager社のシリンダー+呼吸器

呼吸器やヘルメット、ハズマットスーツなどは火災、災害現場で消火・救助活動を行う消防士さんを支える重要な装備品です。実際に背負うと想像よりも軽く感じ、装備の軽量化や背負いやすさに工夫が凝らしてあるのだと感じました。

まとめ

INTERSCHUTZは消防、救急、防災、予防、通信など消防防災業界を横断的に見られる展示会でした。次の記事では、屋外展示について紹介します。

  1. Mayday Rescue Challengeに関するインターシュッツの公式サイトより
    https://www.interschutz.de/en/side-events/competitions/mayday-rescue-challenge/ ↩︎
  2. ドイツ工業規格DINの消防用ホースに関する規格
    https://www.din.de/de/mitwirken/normenausschuesse/fnfw/veroeffentlichungen/wdc-beuth:din21:101847000 ↩︎
  3. ドイツのホースメーカーであるGollmer&Hummel社の公式サイトより
    https://gollmer-hummel.com/feuerwehrschlauch ↩︎
  4. 消防用ホースの技術上の規格を定める省令
    https://laws.e-gov.go.jp/law/425M60000008022 ↩︎
この記事の監修・執筆者
桐井 航汰
学時代は法学部に在籍し、卒業後はインフラ系のシステムエンジニアとして社会人経験を積みました。その後、消防設備が持つ将来性や「人々の安全を守る」という仕事の意義に強く惹かれ、タイムラン防災に参画いたしました。 将来的には、消防設備業務と行政手続きを横断的に支えられる新しい消防設備業者の形を目指します。 タイムラン所属行政書士。
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