自動火災報知設備の絶縁不良と改修|原因特定までの流れと対処法

2026.03.29
自動火災報知設備絶縁調査

今回は他社で発覚した絶縁不良(0MΩ)の原因特定調査を行いました。原因は配線が天井を構成する金属部分に接触していたことによるものです。今回はその調査の流れと絶縁不良が起きる仕組みを解説します。

今回は弊社の管理物件ではなく、他社さんで点検を実施している物件で自動火災報知設備の絶縁不良があり調査してきました。

絶縁不良とは何か

そもそも電気回路における絶縁とは何かというと、電線内部の銅線と周りの樹脂(絶縁体)が内部から電気が漏れないようにしっかりブロックされている状態のことをいいます。

本来銅線は電気が通る導体のため、他の金属部分に触れてしまうと電気が触れている部分から他の金属方向に流れていって逃げてしまいます。それを防止するために銅線にはシースと呼ばれるビニルやポリエチレンなどの素材で絶縁処理されています。

何らかの原因で銅線部分が金属(軽鉄・全ねじ・配管など)に触れると、電気が触れた金属から建物内部金属を伝わって地中に逃げてしまいます。これを「漏電」といいます。

この漏電状態を調べるために絶縁抵抗計(メガー)を使用します。数値(MΩ)が低下します。銅線部分が少し金属部分に触れると「絶縁抵抗計の数値が少し」悪くなります。銅線部分がべったり金属部分にくっつくと「絶縁抵抗計の数値が0」になります。

絶縁状態が完全なときは「無限(インフィニティ)」を指し、電気が完全に逃げているときは0MΩになります。この数値は法令で規定されており、自動火災報知設備の場合は0.1MΩ以上の数値があれば合格とされています。

0MΩの状態になると回路に電気が流れなくなるため、配線に繋がっている感知器・防火扉、ダンパーなどの機器類が作動しなくなります。火災時に設備が機能しない状態になるため、早急な原因特定と対処が必要になるのです。

余談ですが、自動火災報知設備の感知器配線回路は通常24Vから30Vの電圧がかかっています。感知器類が動くには最低でも15V程の電圧が必要です。もし絶縁が悪いと回路が15V以下になるため感知器が作動しなくなります。

設備種別 回路種別 基準値 測定器
自動火災報知設備・非常警報設備 電源回路(対地電圧150V以下) 0.1MΩ以上 DC250V絶縁抵抗計
電源回路(対地電圧150V超) 0.2MΩ以上 DC250V絶縁抵抗計
自動火災報知設備・非常警報設備 感知器回路・附属装置回路 0.1MΩ以上
(1警戒区域ごと)
DC250V絶縁抵抗計

消防法施行規則 第24条第1項第1号ロ

電源回路の絶縁抵抗はDC250Vの絶縁抵抗計で測定し、対地電圧150V以下の場合は0.1MΩ以上、150V超の場合は0.2MΩ以上であること。感知器回路および附属装置回路の絶縁抵抗は、1警戒区域ごとにDC250Vの絶縁抵抗計で測定した値が0.1MΩ以上であること。

条文全文はe-Gov法令検索で確認

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絶縁抵抗の数値と状態の関係

銅線が金属に少しだけ触れていると数値が少し悪くなり、完全に接触していると数値がゼロになります。少し触れている程度であれば、何らかの拍子に接触がなくなって「直ってしまう」ことがあります。そうなると原因の特定ができなくなるのがこの調査の難しいところです。今回は完全にゼロMΩだったので、完全に接触している状態と判断できました。

調査の流れ

火災受信機内部
火災受信機内部
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火災受信機で不良回路を特定する

まず受信機側で絶縁状態を確認します。受信機は全ての配線が集まっているので、これらの配線を調査することで絶縁が悪いエリアを特定することができます。

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受信機でエリアを特定できたら該当場所へ移動

絶縁が悪い回路が特定できたらその回路が機能している場所に行き、該当する機器から線を外します。そして絶縁抵抗計で測定。どこの部分の配線を外すかはケースバイケースです。

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回路の1個目の器具を外し絶縁試験行う。フロアをまたがる幹線か横に走る信号線かを断定

絶縁が悪いのはその該当エリアとは限りません。そのエリアまで行く途中の幹線(配線の束)のどこかで絶縁不良を起こしている可能性もあります。その断定をすることで絶縁不良の対象エリアを狭めていきます。

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幹線は正常でした。横の階のフロア内部で絶縁不良を起こしていることが確定したので更に絶縁不良対象エリアを狭めていく

階のフロアで絶縁不良が起こっていることが確定したので、機器に繋がっている配線を外しどの線で絶縁値0になるのかを見つけていきます。正確な配線ルートが分かる図面があれば楽なのですが、そのような図面にありつけることは稀です。地道に探していけば原因は突き止められます。

①受信機で不良回路を特定する

自動火災報知設備絶縁調査

火災受信機は建物のあらゆる場所に線を送って火災に関する情報収集やベル、防火設備を制御しています。使用している配線は100本以上になります。

この100本のうち絶縁が悪いのが1本の時もあれば複数の時もあります。不良特定については配線をバラしてみないとわかりません。まずは共通線をすべて取り外してから計測を開始します。

共通線とは、簡単にいうと-(マイナスの線)とイメージしてみてください。直流の電気はプラスからマイナスに流れます。プラスから出たそれぞれの線を1本のマイナス線で落とすということです。

具体的にいうと、火災報知器の回路は非常に本数が多いので、マイナス線を共通線として設けることで総合的に使用する配線の本数を少なくすることができます。

基本的にプラスの線7本で1つの共通線を使用します。共通線の絶縁が悪ければその共通線自体が問題なのか、それともプラスの線7本のどれかが問題なのかに別れます。これらの作業を一つ一つこなしていきます。

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警戒区域と共通線の関係

火災報知器の感知器回路は1フロア1警戒かつ1警戒600㎡までと決められています。これを警戒区域と呼びます。1警戒区域を1つの線(プラス線)を使うとして、共通線1本に対して7警戒区域まで賄うことができます。警戒区域については別の記事で紹介しておりますのでご参照いただけますと幸いです。

共通線試験の説明図

②受信機でエリアを特定できたら該当場所へ移動

1本の共通線は7本の警戒区域までまとめられることは書きました。共通線の絶縁不良が見つかったら次に探すのは共通線の絶縁不良か他の7本の線の絶縁不良かです。

下の図をごらんください。

受信機 端子台 C L1 L2 L3 L4 C(共通線) L1 L2 L3(絶縁不良) L4 軽鉄・全ねじ(地絡)

図ではL3で絶縁不良が起こっています。それぞれの警戒区域のL線と共通線のC線は全て繋がった回路となっています。この状態で絶縁を計測しても原因が共通線なのか、それとも警戒区域のL線なのかがわかりません。

この原因を特定するためにはそれぞれのエリアで全ての線を切り離す必要があります。切り離した後絶縁を計測をすればどの配線が悪いのかが判明します。

受信機 端子台 C L1 L2 L3 L4 C(共通線) L1 L2 L3(絶縁不良) L4 軽鉄・全ねじ(地絡)

上図のように配線を切り離すと回路がそれぞれ独立し初めてどこで絶縁不良が起こっているかを断定することができます。ここまできたら後は範囲を絞っていく作業へと移ります。

③回路の1個目の配線を外し1次側2次側を調査

切り離して絶縁が悪い回路を特定できたら、その回路の1個目の器具から配線を外して絶縁を測定します。この作業の目的は1個めの機器よりも前の配線が悪いのか、後の配線が悪いのかを特定するためです。

1個目の機器から受信機側を1次側、回路の端末側を2次側とします。今回の測定では2次側の絶縁抵抗値が0を指しているので1個目の機器よりも先に原因があることがわかりました。

ビル 5F 4F 3F 2F 1F 3F 絶縁不良

ここまで原因が特定できれば同じ要領で横の回路をエリアを絞っていくだけです。

④フロア内部の配線を断定していく

絶縁調査

次はフロア内部の配線を調べていきます。③の工程で1個目の機器から2次側で(フロア側)問題があることがわかりました。今回の作業ではまず、フロア内の内装状況を確認して機器類の配線ルートがどのような経路で終端まで行っているのかの仮設を立てます。

図面があればよいのですが配線が図面通りということも言い切れません。フロアにある階段、エレベーターホール、PS、空調機械室等の配置からなんとなく配線ルートの推定が可能なので、頭の中で配線図を書き、ちょうどルートの真ん中あたりにある機器をバラし③と同様の1次側、2次側の絶縁測定行います。

この方法を繰り返しだんだんとエリアを絞っていきます。今回の調査では共用部からフロア専有部に入った天井内埋設配線に原因がありました。今回の物件では配線の途中にいくつもの配線同士の接続箇所がありました。

配線同士を接続する場合銅線を覆っている薄い樹脂が剥き出しになり傷がつきやすくなります。現場の状況によりビニールテープでしっかりと絶縁処理をする必要があります。

ということで、地道な根気のいる作業となりました。

ビルオーナー様・管理会社の方へ

点検口にある配線

自動火災報知設備の絶縁不良は、定期点検の絶縁抵抗試験で発見されることがほとんどです。今回のように他社点検で発覚したケースでも、状況により原因特定から対処まで対応できますのでお気軽にご相談ください。

絶縁不良を放置すると火災時に火災感知器・防火扉、防火シャッター、防火ダンパーが正常に作動しなくなります。絶縁数値が悪化していると指摘を受けた場合は早めの対処をおすすめします。

絶縁改修ゲーム【キミは何手で改修できるか?】

絶縁調査ゲーム

絶縁不良の回路を最短手数で特定してください

STEP 1:全体測定
絶縁抵抗計
測定回数:0
STEP1:C線の「絶縁計測」を押して全体の値を確認してください。※同じボタンを2回押すとリセットできます。

ヒント:切り離してから絶縁計測。正常回路はINF、不良回路はC線と同じ値が出ます。

この記事の監修・執筆者
株式会社タイムラン代表
株式会社タイムラン代表 / 消防設備士・電気工事士・行政書士
村串 大輔
2005年より消防設備業界に携わり、2011年に株式会社タイムランを設立。自ら現場に立ち、自動火災報知設備やスプリンクラー、避難器具など、電気系から消火系まであらゆる消防設備の施工を数多く手掛ける。
2023年4月にはタイムラン行政書士事務所を開設し、現場知識と法務の両面から防災をサポート。これまでに手掛けた消防関連の申請届出は3,000件以上。現場のことはお任せください。
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